第5章 色変わりの刀と初任務
「私は……消えてしまわないですよ。ここにいます」
更紗は腕を上げ、手のひらで優しく杏寿郎の頬にさわる。
触れられたところから熱を帯び、ゆっくりとその熱は杏寿郎の体を駆け巡っていった。
「更紗、それは俺を誘っているのか?」
その言葉にピクっと一瞬体を揺らすも、いつもの穏やかな笑顔を杏寿郎に向ける。
「そうだったとしたら、どうされますか?」
「そうだったとするならば欲に身を委ねるだろうな。君が任務に旅立った後も……その熱を覚えていられるように」
そう言って杏寿郎は覆いかぶさってそのまま華奢な体を抱き締め、緩く開いている唇に自らの唇を重ね合わせる。
以前に交わした接吻より深い接吻。
1度唇を離し更紗の顔を見ると瞳をトロンと潤ませ杏寿郎を見つめている。
「杏寿郎さん、私……」
気丈に振舞っていたのだろうが、やはり体は正直で更紗は小刻みに震えている。
ようやく杏寿郎の体から力が抜け更紗の頭をゆっくりと撫でた。
「大丈夫、まだ何もしないから安心してくれ。更紗のご両親にご挨拶するまでは手を出さない」
今度は優しく抱き締め体を横にコロンと倒し、安心させるように背中をトントンと叩いてやる。