第5章 色変わりの刀と初任務
「更紗は誰よりも俺の扱いが上手くて困る」
耳元で囁かれ更紗の顔は一瞬で赤くなってしまった。
その様子を横目で見た杏寿郎の顔にはようやく笑みが戻り、指で更紗の髪を結っている組み紐で遊びだす。
「初日はあんなにも手間取っていたのが今では一瞬で結い上げてしまう。君は何事も一生懸命で何でも吸収してしまう……俺が君にのめり込んだら俺の想いも吸収してくれるか?」
そのままそれを引っ張られ綺麗に結われていた髪はパサリと更紗の背中に落ちる。
「杏寿郎さん?」
鈴の鳴るような声で呼ばれるだけで杏寿郎は目眩に襲われた。
1度瞼をグッと閉じ更紗を抱きかかえるようにして、ゆっくりと畳へ押し倒す。
絹のように美しい髪は無造作に畳へと流れ羽織は蝶の羽のように更紗を彩っており、黒を基調とした隊服さえ白く柔らかい肌と銀色の髪を映えさせるものに見えてしまった。
更紗の瞳は潤み頬は羞恥からか淡い赤に染まっていく。
「綺麗過ぎて、幻のように更紗は消えてしまいそうだな」
その声があまりに切なくて更紗の胸を締め付けた。