第5章 色変わりの刀と初任務
あっと言う間に賑やかだった居間は2人きり……しかも更紗に至っては全力で怒っている人と2人きりだ。
話しかけようにも何を話していいか分からず、杏寿郎を見つめるだけに終わってしまった。
「すまない、更紗」
杏寿郎はそう言って更紗の手を取り、早足で廊下を歩いていく。
更紗は今までにない杏寿郎の対応に驚き引っ張られるままついて行くしか出来ないでいた。
(なぜ私に謝られたのでしょう?)
頭の中に疑問符を無数に浮かべながら、辿り着いたのは杏寿郎の部屋だった。
中に入ると杏寿郎は襖を勢いよく閉め、その勢いのまま更紗を抱き寄せた。
何がどうなっているのか理解出来ない様子だが、きっと気持ちを落ち着かせようとしているのだと思い、いつも杏寿郎が更紗にしてくれているように背中をゆっくり摩ってあげた。
いつも余裕たっぷりで動じない杏寿郎が、ここまで動じている姿に驚きつつも、色々な姿を見せてくれる杏寿郎に更紗は愛しさが込み上げてきた。
「私、杏寿郎さんが大好きです」
すると力の籠っていた腕の力がスッと抜け、ほんの少し更紗に体重を預ける。