第5章 色変わりの刀と初任務
そんな鉄穴森の様子を見て更紗は危なっかしい手つきで日輪刀を鞘に急いでおさめると、慌てて立ち上がり玄関へ向かって行った鉄穴森の後を追う。
「鉄穴森様!せめてお見送りくらいさせてください!」
すでに草履まで履き終え、玄関を数歩外に出ている鉄穴森を呼び止める。
「更紗さん!走っては危ないですよ!あっ!」
上がりと土間の段差で足を滑らせ、鉄穴森が受け止めようと手を伸ばすも間に合うわけがなかった……のだが、更紗は後ろから幼子のように抱きかかえられ事なきを得た。
「お見送りで相手を心配させてどうする……声さえかければ鉄穴森さんは待ってくださるから急がなくていい」
鉄穴森は杏寿郎と何度か話したことがあったが、いつも勢いのあるハキハキとした口調だったので、今の更紗に対する穏やかな口調に驚いている。
「杏寿郎さん、すみません。でも、ありがとうございます」
そして更紗が笑うと杏寿郎もその笑顔につられるように穏やかな笑顔を更紗に向ける。
そうして更紗も体勢を整え、ようやく更紗と杏寿郎が並んで鉄穴森の前に揃う。