第5章 色変わりの刀と初任務
若干引き気味に千寿郎を見るも、長い期間冷たい空気が流れていた煉獄家では、こうした幸せな空気が流れること自体が喜ばしいことなのだと思い直す。
「人の嫁候補に手を出すほどおちぶれちゃいねぇよ……てか、そろそろ離れろよ。目のやり場に困るんだが」
だが、杏寿郎は1度更紗の顔を見てそれを拒否した。
「それならば君が後ろを向くといい!更紗のこの表情を見ていいのは俺だけだ」
「何だよ?!減るもんじゃねぇだろ!んじゃあ千寿郎はどうなんだよ!!一々後ろ向かせんのか?!」
何を馬鹿なことを言っているんだと言うように表情を歪ませて答えた。
「千寿郎は特別枠だ!しかも千寿郎はこんな時は俺の顔しかなぜか見ない!」
「弟に気ぃつかわせてんじゃねぇか!」
「む!そうだったのか?千寿郎」
「いえ、赤くなってる時に顔を見られると更紗さんが気を遣われると思って見ないだけなので」
「さすが千寿郎だ!」
「んだよ、この頓珍漢家族!!」
そんなやり取りがテンポよく進む中、一番可哀想なのは更紗だ。
色々恥ずかしすぎて顔を向けられない。
(もう皆さん、本当にやめてください!)
そんな更紗の気持ちは届くことなく、3人のそれこそ頓珍漢なやり取りはしばらく続いた。