第5章 色変わりの刀と初任務
ボヤけさせているが、もちろん更紗も杏寿郎が怒り狂っていた理由が気になっているのだ。
「宇髄が持ってきてくれて事なきを得たが、炎柱に喧嘩を売った前田という名の鬼畜を滅しに行くところだった!」
(あのスカートを作ったのが前田さんと言う隠の方と言うことですね)
更紗はいまだに怒りのおさまらない様子の杏寿郎の手を握る。
「怒らないでください。こうして天元様がキチンとした隊服を持ってきて下さいましたし。その前田さんという方も、何かの手違いで先程の物を送ってしまっただけかもしれませんよ?」
更紗の笑顔に判断が鈍りそうになるが、杏寿郎は前田がそんな生易しい存在ではないと知っている。
見目麗しい女子や少女の隊員を見つけては、先程のような際どい隊服を作ったり、下衆な言動をしている事を知っている。
(この純粋無垢で人を疑うことを知らない少女なんて、格好の獲物になってしまう!)
「更紗、世の中には近付いてはならない人間もいる!俺のいない所で絶対に前田に近付くようなことはするな!」
「え、でも」
「返事は、はい!だけしか受け付けん!」
「は、はい!分かりました!」
「よし、では居間へ行こう!」
こうして前田は絶対に炎柱の許嫁には近付けなくなった。