第5章 色変わりの刀と初任務
そうすると
ハラリ
と製作者を記した紙が1枚落ちてきた。
『前田まさお』
「前田……いい度胸だ!この炎柱の許嫁にあのような隊服を送ってよこすとは!悪鬼滅殺!」
普段、滅多な事で怒る事のない兄が顔に青筋を立てて怒り狂っている様子を見て、千寿郎は何となく事情を察し、隣りの部屋に行こうとはしなかった。
だが、自分の部屋へ向かう兄を放ってはおけない。
「兄上!落ち着いてください!何となく何が起こったのかは分かりましたが、日輪刀は鬼を滅殺するものであって人を」
「鬼畜も鬼と同義だと思うが!」
千寿郎の言葉は聞き入れてもらえない。
兄の腕にしがみつき、どうしようかと悩んでいるところへ、まるで天からの使いのような人物が現れた。
「煉獄ーって、おぉ!派手に怒り狂ってんな!よし!俺もゲスメガネ退治手伝ってやる!」
天の使いではなかった。
猛獣が増えてしまった。
「宇髄様!煽っていないで兄上を止めてください!」
可哀想に千寿郎はもう涙目である。
「冗談冗談、悪ぃな千寿郎。お前の兄ちゃんの気を鎮める物を届けに来た。おい、煉獄!弟困らせて、姫さん放ったらかして何してんだ?」
呆れたような声音も今の杏寿郎には届かない。