第5章 色変わりの刀と初任務
「え?!お義父さまはまだ早かったでしょうか……」
更紗が不安げに杏寿郎を見上げるも、杏寿郎は笑顔で槇寿郎を見るように促した。
当主の威厳はどこへ落としてきたのか、驚くくらいの笑顔である。
「あの、お義父さま??」
更紗の声に槇寿郎は我に返り、僅かに表情を引き締めるも締まりがない事は変わらない。
「すまん。うちには娘がいなかったのでな。娘がいればこんな感じだったのかと思うとつい……いや、取り敢えずお前達の事は認める。今は使っていない離も好きに使うといい。ここに居座るより、千寿郎に早く知らせてやれ。きっと喜ぶ」
そう言ってフイッと後ろを向いてしまった。
2人は笑顔で顔を見合わせると、もう一度、槇寿郎に深く頭を下げた。
「ありがとうございます。では、失礼させていただきます」
部屋を出てそのまま千寿郎の部屋へ赴き婚約した事をつたえると、やはり全力で喜んでいた。
「姉上と呼んだ方がよろしいですか?」
と真剣に聞かれたので、更紗は今まで通りでお願いしますと心からお願いをして、煉獄家への婚約の報告は終わった。