第5章 色変わりの刀と初任務
本当に心からそう思っているのだと分かるくらい、穏やかな顔だ。
そんな槇寿郎の表情と言葉に、更紗は鼻の奥がツンと痛くなり涙が出そうになった。
「とんでもございません。今の私があるのは、杏寿郎さんや沢山の方が支えてくださったからです」
槇寿郎は、そうか
と呟くと更紗の頭から手を離し、更紗に向かって頭を下げた。
2人は思ってもみなかった槇寿郎の行動に驚き、思わず自分達も頭を下げる。
「情けない話だが、親子共々、我々は未熟者。だが、杏寿郎は未熟ながら、常に前を向き努力を怠らず自力で柱にまで上り詰めた男だ。何事にも全力で真っ直ぐに突き進める強さがある。だが、その強さゆえに1人で抱え込んでしまう質でもある。どうかそんな所も含め継子と言う立場だけでなく、後々には妻として支えてやって欲しい」
更紗は再び顔を上げ、槇寿郎を見る。
すると槇寿郎もこちらを真剣な眼差しで見つめていた。
「私に出来うる限り、全力で杏寿郎さんを支えさせていただきたいと思います!お、お義父さま!」
ブハッ!!
父親の言葉にジーンとしていた杏寿郎も、ぜひ嫁にと必死に言葉を紡いでいた槇寿郎も、更紗の最後の言葉に吹き出してしまった。