第5章 色変わりの刀と初任務
2人で三つ指をついて頭を下げ、そのままの姿で杏寿郎が口を開いた。
「私と更紗についてのご報告です。昨日、口頭のみでは御座いますが婚約を致しました。後に婚姻関係を結ぶ事を許可願えないでしょうか?」
煉獄家は代々、鬼殺隊の柱を務める由緒正しき家柄である。
柱を志半ばで引退した父親であっても煉獄家当主には変わりない。
当主の許可がおりなければ、婚姻関係を結ぶ事は出来ないのだ。
そして更紗は平安時代から続く家柄であっても、公には全く知られておらず、両親は最近ようやく所在が判明したばかり。
極めつけは現炎柱 煉獄杏寿郎の継子である。
普通ならばつり合いが取れず、許可がおりないことが多い。
2人はそれを分かっているからこそ、三つ指をついたまま頭を上げず当主の下す結論を静かに待つしかないのだ。
「いつだ?」
「へ?」
返答になっていない当主の言葉に、杏寿郎はつい気の抜けた返事をしてしまった。
僅かに顔を上げた息子の顔を見る目は厳しいが、どことなく締まりがないように感じる。
「祝言はいつ挙げるのかと聞いている!」
許可がおりるまえに祝言の日取りを聞かれてしまい言葉が出てこないようだ。