第5章 色変わりの刀と初任務
最終選別を無事に突破した次の日、口頭だけのものとは言え婚約した事を槇寿郎と千寿郎に言わない訳にもいかず、2人は緊張の面持ちで槇寿郎の部屋の前に来ていた。
顔を見合わせて2人の準備が整ったと杏寿郎が確認すると、廊下に正座をして部屋の主に声を掛ける。
「父上!ご報告したい事がございます!今お時間よろしいでしょうか?」
「あぁ」
間髪入れず槇寿郎から許可がおりたので、杏寿郎は心の中で首を傾げながらも襖に手をやり、ゆっくりと開いていく。
最近では布団が敷きっぱなしということはなくなりつつあったが、今日は一段と掃除を念入りにしたように隅々まで綺麗である。
そんな部屋にも杏寿郎は驚き、自分の父親の姿を見てもっと驚き目を皿のように大きく見開いた。
板に付いていた浴衣姿が今では着流しとはいえ着物をキチンと着こなしており、髪は綺麗に結い上げられて無精髭が目立っていたはずが綺麗に処理されている。
「父上、いつもと雰囲気が」
「いつも通りだ!」
被せ気味に言われたので、杏寿郎も口を噤むしかない。
これ以上つついて機嫌を損ねられては本題に入ることが出来ないと悟り、本来の目的を果たす。