第4章 鍛錬と最終選別
急いで帰りたい気持ちは山々だが、治しきれていない傷や技の乱発による体の疲労、寝不足による酷い眠気が更紗の足を鈍らせる。
食料は全て食べきり荷物は軽いが、帰りに配られた隊服が重石の如く更紗の背中にのしかかる。
(杏寿郎さん、確か今日は任務があると仰られていましたが……無事に帰ってきているでしょうか?)
ふと杏寿郎の顔が頭に浮かび、涙が自然と溢れてきた。
今は人里離れた場所なので問題ないが、街中で歩きながら泣いていると怪しまれそうだ。
「うぅ……杏寿郎さん、会いたいです。寂しくて辛くて……うっ……死んでしまいそうです!」
涙で視界がボヤけ、足がもつれてしまった。
もう踏ん張る力もない、そのまま倒れてひとしきり泣いてしまおうと地面の衝撃に備えるも、やはり衝撃はやって来ない。
この感覚は知っている。
抱きとめてくれている温かさに、また涙が溢れ出した。
「せっかく生きて戻ったのに、ここで死んでは約束が守れないぞ」
力を振り絞り顔を上げると、そこには誰よりも会いたいと望んでいた人の笑顔があった。
「うぅーー……杏寿郎さん、杏寿郎さん!!わぁぁん!生きて最終選別から……戻りましたぁ!」