第4章 鍛錬と最終選別
朝餉で腹をしっかり満たし、更紗はついに煉獄家全員に見送られて藤襲山へと向けて歩き出した。
あと3分の1という距離で、3人が朝から作ってくれた握り飯が入った大きな弁当箱を開いて中身を頬張る。
これで中身は全部平らげてしまった。
傷む事を考えると、山に着くまでに食べきらなくてはならなかったのだ。
「皆さんの気持ちは有難く頂きました!後は山に向かうだけです」
そう言って弁当箱をしまい、大量に渡された保存食を確認する。
漬物や干し魚、干した果物や焼き飯なども入っている。
「どこかに拠点を作って、保管しておかなければ重くて闘えませんね」
困ったような声音だが、表情は煉獄家の皆の温かさを喜ぶかのように幸せに満ちている。
「よし、出発です!」
そう言って更紗は日の光を見上げて歩き出した。
胸の奥底にはもちろん恐怖がすくっている。
杏寿郎がそばにいない状況で鬼を狩るのは初めてなのだ。
誰にも頼れない状況に一瞬身震いしたが、そんな己を叱責して1歩ずつ確実に最終選別の行われる藤襲山へと足を進める。
そこに後々に影響する出会いがある事も今はまだ知らない。