第4章 鍛錬と最終選別
そして最終選別の行われる早朝、更紗は煉獄家の居間で杏寿郎と向かい合って座っている。
「ついに最終選別の日だ。更紗ならば、必ず生きて帰ってくる事が出来る。油断せず、どんな鬼相手にも全力で闘うこと」
杏寿郎の言葉に更紗は大きく頷く。
「かしこまりました。必ず生きて帰ってまいりますので、信じてお待ちください!」
更紗の不安げだけれども、杏寿郎を心配させまいと己を鼓舞する姿に胸が締め付けられる。
「信じている」
そう言って杏寿郎は更紗の両手を強く握る。
更紗はそんないつもと違う様子の杏寿郎に首を傾げて問い掛けるように見つめている。
「君が帰ってきたら伝えたい事がある。だから、何度も言うが必ず生きて帰って来てくれ。待っている」
伝えたい事が更紗は気になったが杏寿郎が帰ってきてからと言うのだから、それまでは絶対に言ってくれないと確信しコクリと首を縦に振る。
「私も杏寿郎さんに伝えたい事がございます。ですのでどんな状態になっても必ずここに戻りますよ」
縁起でもない事を言い出す。
「いや、君は五体満足で帰ってくる事。絶対条件だ!」
大きな目をさらに大きく見開き、頷かざるを得ない状況に素直に従うことにした。