第4章 鍛錬と最終選別
その言葉に杏寿郎は顔を上げ強く否定した。
「そのような事は決してありません!最終選別で必ず生き残れる程、一般の剣士にすら負けぬほどに鍛えております!」
その言葉に槇寿郎は拳を杏寿郎に向かって突き出す。
その拳と父親の顔を杏寿郎は交互に見やった。
「それならば必ず生きて帰ってくる。自分達柱の力とあの子の力を信じろ。そして、これからも絶対に死なせるな。瑠火の時のような想いはお前はしなくていい、死んでも守れ!」
その拳の意味がようやく分かり、杏寿郎は父親の拳に自分の拳を強く当てた。
「もちろんです。ですが、俺は死なずに更紗を守りますのでご心配なく」
拳を離し、槇寿郎はにわかに口角を上げた。
「偉そうな口をたたくようになったな。その言葉、違える事のないように励め」
久しぶりの父親からの激励に涙腺が緩みそうになるが、ぐっと堪えて手を畳につき、深く頭を下げて挨拶をする。
「ありがとうございます。では、私はこれにて失礼いたします」
もう槇寿郎からの返事はなかったので、そのまま部屋を出て行く。
そうして暴挙をしでかしたトンデモ少女に思いを巡らせた。
(君は長年解けなかった我々家族のわだかまりも解いてしまうのだな。早く最終選別から帰って来い。俺も千寿郎も父上も待っている)