第2章 追い風
これに関してはいくら警戒心が地下の更紗であっても拒否する可能性がある。
悪人に能力が知られると、酷い扱いを受ける事になるのは必至だ。
煉獄は悪用する気など毛頭ないが、その判断を下すのは更紗である。
煉獄が固唾を
「構いませんよ」
飲んで様子を伺う前に了承された。
この少女の警戒心はどうなっているのだろう。
煉獄は頭が痛くなってきた。
「月神少女に確認を取った俺が言うのもなんだが、悪用されたら傷付くのは君なんだ。もっと真剣に考えて答えを出すんだ」
「それは理解しています。ですが、この力以外は一般の方と何も変わらない私が拒否したり抵抗したとしても、力でねじ伏せられれば結果は変わりません。それに私が傷付くだけで、他に被害がいかないならば嘆くほどの事でもありませんよ」
そう言って作り物の笑顔を貼り付ける。
それはこの笑顔を作り慣れていると言うことでもある。
(この少女は警戒心が低いのではない……自分以外に被害が及ばないなら構わないと言う、自分にあまりに厳しく、他人をどこまでも尊重出来る心根から来るものだったのか。だが!このままでは良くない!)
「君の考えは理解した!ご当主であるお館様には、君の言葉に甘えて報告させてもらう!しかし、月神少女は今日、この場から自分を大切にする術を身に付ける必要がある!」