第2章 追い風
そう言って反対の手の平をあてると、傷口を覆うように白銀の美しい朝露のような粒子が舞いだした。
すると瞬きをするくらいの速度で傷が塞がる。
傷が治ると白銀の粒子は、蒸発するように霧散していった。
「傷が跡形もなく……こんな事があるのか?いや、すまない、初めて見たものだから驚いただけだ。気を悪くしないでくれ」
更紗は全く気にしていないというようにゆっくりと首を左右に振った。
それに煉獄はホッと胸をなでおろし言葉を続ける。
「なるほど、確かに自己再生能力とは似て非なるものだが、その力は生まれつきなのか?」
「そのようです。両親にそう教えてもらいました。どうやら母方の遺伝のようなもので、子供を産むと、その子供に今の能力が引き継がれると言っていました。そこに男女の縛りはないですが、1人目の子供だけ、また引き継がれるので親になった時点で能力は使えなくなるそうです」
あまりにも非現実過ぎて上手く飲み込むことが出来ない。
だが実際にこの目で不思議な力を目の当たりにした。
夢ではなく現実で起きていることに間違いない。
「この事を俺の組織のご当主である人に伝えても問題ないか?組織の特異上、君の力は無視出来ない案件だ」