第4章 鍛錬と最終選別
杏寿郎はそう言うと回している腕に力を入れ抱き寄せる。
その間も更紗は身を縮こませたまま、杏寿郎にされるがままになっている。
「よ、よく分からないですが、あの……男女のあれこれを……という意味でしょうか?」
相も変わらず律儀に答える更紗に思わず吹き出してしまった。
「アハハッ!!すまない、虐めすぎた!だが、覚えておいで。次に同じ事があれば俺は今のように抑えることは出来ない。君の言う、男女のあれこれをする事になる」
「え?!それって……」
再び顔が近くなるが次はすぐに離れてしまわないよう、杏寿郎が更紗の顔を手で押さえると、自らの頬を更紗の頬へ押し当てる。
「どういう意味だろうな……俺が先に上がるから、更紗は俺が出て行ったらここから出なさい。俺の浴衣を置いていくから、それを着るといい」
「は、はい!ありがとうございます……」
そうして更紗から腕を外し、杏寿郎は浴槽から出て引き戸の向こうへ去って行った。
「な、な、な、何が起こったのでしょう?!心臓がうるさいほど鳴って止まりません……!!」
そんな更紗の声を聞いていた杏寿郎も心臓が胸を突き破らんほどに強く打ち続けていた。
(父上!!今から抗議に向かわせていただきます!)
杏寿郎は体の水滴を手拭いで拭い、新しい手拭いで下半身を覆うと自分の部屋へ浴衣を着る為に足早に廊下を歩いた。