第4章 鍛錬と最終選別
そして自分の顔を更紗の右肩に乗せる。
「更紗、父上の差し金とは言え、男の風呂に入ってくる事がどういう事か分かっているのか?」
「え、あの、杏寿郎さん。すみません、はしたない真似を致しまして……」
更紗の見当違いの言葉と、更紗の背中越しから感じられる激しい鼓動に笑みがこぼれる。
「君は無防備過ぎて心配になる。後生だから、俺以外にこんな事をしてくれるな、四六時中守ってやる事は出来ないんだ」
切ない声音に思わず更紗は右肩に乗っている杏寿郎へ顔を向ける。
(わっ!!顔が近いです!!)
慌てて前を向く更紗に思わず加虐心が生まれてしまう。
「俺は男だ、ずぶ濡れで縮こまる愛らしい少女を目の前にして、欲が湧かないと思っているのか?それとも、手を出せないほど臆病だと思っているのか?」
ようやく杏寿郎が言わんとしている事が朧気に理解出来始めた更紗はビクッと体を震わせる。
「臆病だなんて……そんな事は……」
そう答える更紗の耳と頬は真っ赤になってしまっている。
「臆病でなければ、俺がどうしたいか分かるか?」