第4章 鍛錬と最終選別
そうして現在、更紗は狭い湯の張られている浴槽の中で杏寿郎に背を向けて縮こまって座っている。
「まさかここまでするとは思わなかった。正直、最終選別は諦めてもらおうと思っていたのだ……」
ハァ……と更紗の後ろで小さな溜息が聞こえた。
「す、すみません……もうこれしか捕まえられる手はないと思いまして……」
小さくなる更紗の声に杏寿郎は思わず笑ってしまった。
「君はここまでするのに、えらく今はしおらしいな!これは更紗が考えたのか?」
「い、いえ。ご当主様が案を出してくださいまして……」
(父上は嫁入り前の娘になにをさしているのですか?!何かよからぬ意図を感じるが……)
杏寿郎は縮こまる更紗の背中を見る。
浴衣を着ているものの、もちろん浴槽に浸かっているので濡れて肌が透けている。
うなじに滴る水滴も嫌に色気を感じた。
「更紗、どのような手を使ってもと言ったのは俺だ。君は手段はどうあれ、俺を捕まえた。課題は合格だ。だが……」
杏寿郎は言葉を1度切り、後ろから更紗の肩に腕を回す。
ピクッと更紗は反応するが、拒否をするつもりはないようだ。