第4章 鍛錬と最終選別
殺傷能力を上げた罠を張ろうとも、正攻法で捕まえに行こうとも杏寿郎は全く捕まる気配がない。
任務もこの為に休んでもらい他の柱の人に穴埋めをしてもらっているのに、このままでは申し訳が立たない。
だが、ついに明日の朝で期限を迎えてしまう夕方になってしまった。
落ち込みつつも少し気を紛らわせようと、槇寿郎の部屋の前へ箱膳を置きにやってきた。
するといつもは更紗が話し掛けるまで声を出さない槇寿郎が、自ら襖を開けて更紗を部屋へ招き入れた。
「あの、ご当主様、何かございましたか?」
正面に座る槇寿郎は見た目的にボロボロになっている更紗をみて苦笑する。
(わぁ!初めて笑ってくださいました!)
厳密に言えば苦笑なのだが、更紗はそれでも嬉しいのかニコッと笑みを返した。
「杏寿郎を捕まえるのに苦労しているみたいだな。いい案を教えてやる、だが、これは杏寿郎にも千寿郎にも感付かれると成功しない。聞くか?」
もう形振り構っていられない更紗は迷うことなく頷く。
「よし、いい心掛けだ!それはな……」
ここで秘密の会合が行われていた事を杏寿郎と千寿郎が知るのは、半刻後となる。