第4章 鍛錬と最終選別
「煉獄、姫さんの体調はどうだ?」
杏寿郎が居間に入ってくると、天元は心配そうに更紗の容態を確認してきた。
「問題ない。慣れない技を乱発したから、手足が動かないだけだ」
そう言うものの、明らかに沈んでいる杏寿郎に天元は小さく溜息を漏らした。
「俺も嫁がいるから気持ちは分からんでもねぇが、姫さんがくたびれる度にお前が落ち込んでちゃ身が持たねぇぞ」
天元の言葉から、更紗の力や屋敷での事を知っているのだろう。
杏寿郎は天元の前に座り、嫌に整った顔を見る。
「分かっているのだが、小さな事で笑う更紗を見ると心が抉られる」
更紗にも千寿郎にも見せない表情だ。
柱同士で事情を把握している天元だからこそ見せられる顔なのだろう。
「まぁ、そんな落ち込む炎柱 煉獄杏寿郎に朗報を伝えてやる。派手に耳をかっぽじって聞きやがれ!」
杏寿郎は丸まっていた背をピンと伸ばし、天元を力強いいつもの目で見た。
「朗報とは?!更紗に関することか?!」
いきなり元気になった杏寿郎に苦笑いを浮かべながら、天元は頭を上下に振って是と答えた。