第4章 鍛錬と最終選別
杏寿郎は更紗を抱えたまま居間へと天元を案内し、そこで待つように言い残して廊下を歩いていく。
「杏寿郎さん、私は大丈夫ですので天元様とお話しをして下さい。ここからなら自分で移動できますので……」
と言うものの、杏寿郎は更紗が自力で歩けるとは到底思えなかった。
まだ足に力が入らず、抱えられたままプラプラしているからだ。
「君は相変わらず頼るのが下手だな。宇髄は今日泊まっていく。まだ日も落ちていないから、時間はたっぷりあるのだ。これくらい待たせても問題ないし、ここで俺が君を見捨てて行けば俺は罪悪感に苛まれて、宇髄には軽蔑される」
そう言われてしまえば更紗ももう何も言えず、大人しく運ばれるしかない。
そして部屋に辿り着くと杏寿郎は綺麗にしまわれていた布団を敷き直し、更紗をそこに寝かせてやった。
「ゆっくりと休むといい。夕餉が出来れば千寿郎に来てもらうようにするから」
そう言って立ち上がろうとするが、更紗が隊服の袖を軽くつまんできたのでそちらに意識を戻す。
「あの、ほんの少しでいいので手を握っていただけませんか?」
恥ずかしそうに少し頬を赤らめ、上目遣いで見つめられては杏寿郎は抗えない。