第4章 鍛錬と最終選別
そう言って杏寿郎はいつものように更紗の頭に手を置き優しく撫でる。
更紗は嬉しそうに顔を綻ばせているが、落ち着かないのか視線を辺りに巡らせている。
「おい、煉獄。姫さん可愛がるのは勝手だが、派手に俺の存在忘れてるだろ?!」
天元はそう言って更紗を杏寿郎から剥がし取り、後ろから両肩に腕を回して軽く自分の胸に納めた。
行き場を失った杏寿郎の手はそのままの状態で止まっている。
「姫さん、本っ当に華奢だな!よくそんな細腕であんな一撃を放った!やっぱ派手に面白ぇ!!煉獄のところからうちに来ねぇか?うちには3人の嫁もいるから、きっと楽しいぞ!」
天元自身そうするつもりはもちろん毛頭ない。
ただ自分の存在を忘れて更紗のみに気を向けていた杏寿郎に対する、ちょっとした嫌がらせ……のはずだった。
天元がチラッと杏寿郎を見ると、事もあろうか日輪刀の柄に手をやり今にも斬りかかろうとしている姿が見えた。
慌てて弁明しようと天元は口を開きかけたが、それは更紗によって遮られた。
「天元様?」
更紗がそう言って、スルリと天元の腕から逃れる。