第4章 鍛錬と最終選別
(止まらない!このままだと木に……!!)
更紗は受け身を取るために体を捻ろうとするも、勢いがありすぎて上手くいかない。
「くっ!!」
すぐに来るであろう痛みに備えるも、更紗に届いたのは温かい柔らかな衝撃だった。
「師範、すみません。お手間を掛けさせてしまいました」
杏寿郎は更紗が弾き飛ばされると同時に呼吸を使用して全力で追い付き、更紗を後ろから抱きとめていた。
「謝る事ではない!かすり傷を付けることは叶わなかったが、宇髄に片手ながら全力で弾かせたのだ!よくやった!」
厳しい鬼師範の杏寿郎に褒められ、更紗は嬉しそうに杏寿郎を見上げた。
「ありがとうございます。でも、天元様が技を誘導してくださったから、ようやく出せただけですよ」
更紗の謙遜に杏寿郎は大きく頷く。
それは事実であって、天元が誘導していなければ更紗は技を出すことなくねじ伏せられていたのだ。
「相手は柱だ!後輩を導くのが柱の役目。宇髄はその責務を全うした。それを君は全力で受け、攻撃を仕掛けた!怖気付かず、向かっていく心意気は賞賛されるものだ!」