第2章 追い風
ある程度成長していても世間知らずも度が過ぎると己の身すら守れなくなるのだと、今日初めて覚えた煉獄である。
「君が思うより、外の世界は怖いということだ!よく知らない男に気を許してはいけない!」
よく分からないと言うように首を傾げるが、素直な性格なのかコクリと頷く。
「一緒の部屋で休むかどうかは今はさておき、月神少女は疲れていないのか?」
「?はい」
煉獄は考え込むように顎に拳を置いた。
そして部屋を出ようと開けた襖を閉め、更紗の前に腰を下ろす。
「月神少女がよければ、君の話を聞かせてくれないか?正直言うと、君の処遇をどうすればいいか考えあぐねている」
「そう……ですよね。一瞬で大怪我がなくなるのは普通ではありませんもんね」
いきなり核心をついてきた。
煉獄が1番処遇を決めかねている要因、それは自己再生能力が一般人と比べ物にならないと言うところだ。
(瞳も歯も爪も人間のものなので鬼ではないだろうが……一般人でもない。自ら話してくれるなら本望だ)
「普通か普通でないかと聞かれると普通ではない。だが、何も知らず否定する気持ちは一切ない。だから教えてくれ」
更紗は目を丸くして不思議な生き物を見るような目で煉獄を見つめる。