第4章 鍛錬と最終選別
たが総体的に考えるならば、治癒する事が可能な能力は更紗ただ1人しか使えない。
剣士でなくても誰もが欲する力であり、より貴重なモノだと感じる。
「なぜ、その能力で陰を??」
「その力は有限らしい。かすり傷程度なら問題ないらしいが、生命の源……つまり食事を取り得られる生活を営む上で必要な栄養を糧に治癒が行われるゆえ、重篤なものを治癒する際は命を削ることになる」
千寿郎の体が硬直する。
その瞳には次の杏寿郎の言葉が分かっているように、悲しげな色で揺れている。
「俺も詳しくは聞いていないから詳細は分からん!だが俺が図らずも助け出した屋敷で更紗は毎食十分な食事を与えられぬまま、日々その力を使わされていた。それによって数ヶ月、酷ければ数十年の命が削られている」
まだ成人にも満たない少女が酷ければ数十年の命を勝手に奪われていると知った時、精神が崩壊するのではと千寿郎は心を痛めた。
「そんな?!それは取り戻せないのですか?何か良い手はないのですか?!」
ついに千寿郎の瞳から涙が流れてしまった。
(千寿郎も更紗と同じく、人の痛みを自分の事のように考えられるのだな。だが……)