第4章 鍛錬と最終選別
いくら煉獄家の長男であり柱である杏寿郎が諭したとて、その思いを解いてやることが出来ずにいたのだ。
そんな千寿郎が少しでも前を向けるように、そのままで尊い存在なのだと気付けるよう、更紗の言葉をそのまま伝えたのだ。
「そんな前の事を覚えていらっしゃったのですか?ですが、あれは男として当たり前の事をしたまでです」
「その当たり前が人には難しい。千寿郎、お前は立派な煉獄家の男だ!そこを否定してはいけない!自信を持て!」
いまだに真剣な眼差しで語りかけてくる兄の言葉に思わず頷いた。
それを見てようやく穏やかな笑顔になる。
「それでいい!更紗を千寿郎の笑顔と強さで支えてやってくれ。あの少女は自分だけでは抱えきれない陰を背負って、それと闘いながら今を必死に生きている」
「抱えきれない陰……ですか?」
千寿郎は更紗の涙を知らない。
いつも笑顔で過ごし、厳しい鍛錬にも弱音を吐かずに懸命にこなす更紗しか見ていないからだ。
「更紗は代々受け継がれる不思議な力で、自他問わず傷を瞬時に治癒する事が出来る」
千寿郎の目が皿のように丸くなった。
呼吸を使った技を発動させる剣士や柱も、通常の人と比べると超人的な存在である。