第4章 鍛錬と最終選別
更紗が気分よく槇寿郎の粥と全員分の朝餉を作っている頃、千寿郎は兄が鍛錬をしている道場に来ていた。
いつもならば更紗と一緒に朝餉を作っているので、珍しい光景である。
だが声をかけようにも杏寿郎のあまりの鬼気迫る鍛錬に勤しむ姿になかなか声をかけられず、入口で様子を見るしか出来なかった。
さすがにずっと視線を向けられていると杏寿郎がそちらに気付き、手を止めて千寿郎のそばへ歩み寄り視線を合わせる。
「千寿郎、来ていたのであれば声をかけてくれてよかったのだぞ!どうした?共に鍛錬を行うか?」
木刀を渡そうとする杏寿郎に千寿郎は首を左右に激しく振ってそれを受け取らずに言った。
「違うのです!昨日の失礼のお詫びをと思いまして」
杏寿郎は差し出していた木刀を床に置き、笑顔で千寿郎の頭を撫でてやった。
「詫びなど必要ない。俺も更紗も感謝こそすれ、全く怒っていないからな!」
その言葉にホッとしたように千寿郎は肩を下ろしながら不安げに杏寿郎を見つめている。
言わんとしている事を察し杏寿郎は撫でていた手を離し、真剣な表情で千寿郎と向き合った。