第4章 鍛錬と最終選別
杏寿郎の心臓は驚きと焦りでバクバクと激しく胸を打ち付けているものの更紗の無邪気に喜ぶ顔を見て思わず破顔する。
「よくやった!では父上の食事をよろしく頼む!全集中の呼吸を行いながらな!」
昨日ならば顔を引き攣らせていただろうが、今は嬉しい気持ちが上回っているからか満面の笑みで頷く。
「お任せ下さい、師範!」
そう言い残すと意気揚揚と台所へかけて行った。
杏寿郎はその姿を見送ると鍛錬を行うために道場へ向かうも、心の中はもう錯乱状態だ。
(本人に言う前に父上に俺の心の内を知られてしまった……よもやよもやだ……)
明朗快活な青年はそれでも背筋をピンと伸ばし廊下を進む。
最後まで責任を取るためには、更に自分は強くならなければならない。
「俺が死ぬわけにも、更紗を死なせるわけにもいかんな!また明日から鍛錬に力を入れなければ!」
更紗の罷り知らぬところで鍛錬の難易度がグッと上がってしまったが、無意識と言えど自ら上げてしまったのだから甘んじて受けるしかないだろう。