第4章 鍛錬と最終選別
「あ、あのご当主様、私はこのまま杏寿郎さんに手解きを受けても構わないのでしょうか?」
少しの沈黙の後、槇寿郎は片手を上げヒラヒラとさせる。
「好きにしろ」
短い返答であったが、許可がおり杏寿郎はホッと息をつき、更紗は嬉しそうに胸の前で手を握りしめた。
「父上、ありがとうございます。では失礼いた」
「ご当主様!ありがとうございます!ところで今日食べたいものはございますか?私、何か……フグッ?!」
部屋を出る言葉を出そうとした杏寿郎の言葉を遮った更紗の突拍子もない言葉を、次は杏寿郎の手によって防がれてしまった。
(く、苦しいです。何かいけない事を言ってしまったのでしょうか?)
槇寿郎はガクッと項垂れながらボソッと呟いた。
「出汁の効いた粥がいい」
「ふぁい!!」
初めての要望を聞けた更紗は口を塞がれたまま笑顔になり、杏寿郎は目を見開いて驚いたが、ハッとして軽く頭を下げて襖に手をかけて部屋の外へ脱出した。
そうしてそのまま槇寿郎の部屋から離れた所で、ようやく更紗を解放してやった。
「杏寿郎さん!ご当主様に許可いただけましたね!嬉しさのあまり、食事のご希望も伺ってしまいました」