第4章 鍛錬と最終選別
「更紗、君は……」
思わず右手を更紗の頬に持っていこうとしたが、槇寿郎の前だということを思い出し、言葉だけにとどめた。
「それで君の精神が崩壊し、普通の生活さえままならなくなったらどうする?人の幸せの為に君が犠牲になるのか?」
槇寿郎の言葉に更紗は何を言っているのか分からないというようにキョトンとしているが、すぐに笑顔で答えた。
「それは有り得ません。杏寿郎さんがそばに居てくだされば、私が壊れる事はございません」
「「え?」」
恥ずかしげもなく、まるで愛の告白のようなものをサラリと言ってのける更紗に杏寿郎は顔を赤くし、槇寿郎は杏寿郎に鋭い視線を向ける。
「杏寿郎、最後まで責任取れるのだろうな?!いい加減な気持ちなら……」
「ち、父上のご心配には及びません!今はその……まだその時ではないのであれですが……いい加減な気持ちで更紗をそばには置いておりません!」
槇寿郎は珍しく狼狽える杏寿郎の目を見つめるが、嘘は言ってないと分かり、深く言及する事なく再び2人に背を向けた。
一方、再び背を向けられた更紗はアタフタしている。