第4章 鍛錬と最終選別
更紗は奥歯を噛み締める。
先の任務に同行し、杏寿郎は子供が出していた物音1つで表情を険しくしていた……間に合わなかったか、と。
結果的には間に合ったが、あの言葉が出ると言うことは今までの任務で助けられなかった人がいると言う事だ。
あの屋敷の件もその1つだろう。
「父上、それは」
「俺はこの子に聞いている、お前は黙っていろ」
杏寿郎の言葉をも遮断し、槇寿郎は更紗を待つ。
更紗の瞳は悲しさを浮かばせながらも、また別のものも浮かんでいるように見える。
「それは……きっと気に病むと思います!」
あまりにも素直な答えに杏寿郎はもちろん、槇寿郎も時間が止まったかのように動かなくなる。
それに気付かないまま、更紗は続けた。
「悲しくて辛くて、自分を不甲斐なく感じる事もあると思います。それでも、私は1人でも多くの人を守りたいです。助けた人の未来を繋ぎたいと思います。生きてさえいれば、幸せなことも必ず起きます。私がいい例です」
更紗は槇寿郎から杏寿郎に顔を向け、ニコッと笑う。
「私は杏寿郎さんに助けていただき、このお家に置いていただけてすごく幸せです」