第26章 月と太陽
「そうだったな。あの日、あの任務で君を見つけ出せてよかった。弟子にして継子として迎え君の無茶にハラハラさせられていたのに、いつの間にか柱になるまで成長し……その過程でどんどん君を好きになり、今でも日々好きな気持ちが膨れ上がっている」
更紗へと視線を移した杏寿郎は、なぜか足の上でキュッと手を握りしめている華奢な妻の体を抱き寄せ首を傾げた。
「どうした?」
「いえ……私も好きな気持ちは毎日増え続けているのですが、あの……怒らないで聞いてくれますか?」
「?あぁ、約束する」
首を傾げ続ける杏寿郎の首に腕を回し、体重を預けながら耳元で小さく呟く。
「月のモノが来なくなって2ヶ月経過しました」
衝撃的な告白に杏寿郎の頭の中に駆け巡ったのは今日の演武。
「な?!君はどうしてそう無茶ばかり……いや、すまない。久方ぶりにハラハラさせられ動揺してしまった。それはつまり……そういう事なのか?」
「まだ産院に行っておりませんので絶対とは言えませんが、ほぼ確実に。私のお腹の中に杏寿郎君との赤ちゃんがいます」
幸せそうな声音は杏寿郎の鼓膜を刺激し、更紗が感じているのと同じ幸せが徐々に胸の中を満たしていった。