第26章 月と太陽
「そうか!!君は際限なく俺に幸せを運んでくれるな!と、取り敢えず明日は道場を開く前に共に産院へ赴こう!あぁ……どうしたらいい?幸せ過ぎて怖いくらいだ!」
体を締め付けすぎないよう背に回した腕に僅かに力を入れ、更紗をしっかり抱きすくめて首元に顔を埋める。
「それはこちらの台詞です。では朱莉ちゃんも一緒に3人でいきましょう。いつも明日が来るのが楽しみですが、今日は特別に楽しみですね」
「うむ!楽しみだ!あと明日から君は道場を休みなさい。更紗は門下生の間でも人気の師範代なので皆残念がるだろうが、事情を話せば喜んでくれる。さぁ、暖かくなってきたとは言え夜は冷える。部屋の中へ入ろう」
「はい」
抱きしめていた温かな体を抱き上げ、ニコリと微笑んでいる更紗の唇に再び口付けを落として、杏寿郎は部屋の中へと身を滑り込ませていった。
障子が閉まる直前、3人……4人を月明かりが優しく照らす。
あの日、チグハグな2人を見守るように綺麗な満月が優しい月光で包み込んでいたが、今は4人を守るように優しく包み込んでいる。
その光は、多くの尊い命を救いたくさんの幸せを繋ぎ止めた、今は夢幻(ゆめまぼろし)となった白銀の粒子によく似ていた。