第4章 鍛錬と最終選別
更紗は杏寿郎を待たせているので、カラスの行水よろしく驚くくらいの速さで風呂を済ませ居間へ足を進めた。
「む?!本当に入ってきたのか?!」
杏寿郎が食事前に茶でも飲もうと準備をして、それを湯呑みに注ぎ終えたと言う時に更紗が入ってくれば驚きもするだろう。
「はい!お待たせしました!」
よく見ると更紗の髪はびちゃびちゃである。
結い上げているから浴衣は無事なものの、明らかに急いで来たことが分かった。
(……これからは先に飯にした方が良さそうだ)
そう思いながらもわざわざ杏寿郎を待たせまいと思っての行動に野暮な事は言うものでは無いと思い、その気持ちを有難く受け取ることにした。
そうして食べ始めたはいいものの、更紗はいつもと違う雰囲気の杏寿郎になぜか話し掛ける事が出来ず黙々と食べ続け、いつの間にか2人の食事は終わりを迎えてしまった。
空になった皿を眺めながら自分から話しかけるべきか考えていると、ようやく杏寿郎が閉ざしていた口を開いた。