第26章 月と太陽
「おぉ、見ててやるから行ってこい。朱莉ィこっち来い」
1番に名乗りを上げてくれたのは実弥だった。
ここ以外でも柱たちとは比較的頻繁に会っているので、可愛がってもらえる事が分かっている朱莉は差し出された実弥の腕の中へ手を伸ばして抱きついた。
そして実弥の腕の中で振り返り、笑顔を向けてくれている更紗と杏寿郎へと手を振って見送る。
「行ってらっしゃい!」
その言葉に2人が笑って手を振り返すと、朱莉や柱たちに背を向けて演武が行われるところまで歩いていった。
2人の演武が開始されるまで少し時間があるので、腕の中に抱きかかえたまま腰を下ろした実弥に前から聞いてみたかったことを尋ねてみることにした。
「実弥お兄ちゃん、お兄ちゃんは私が産まれる前は傷痕だらけだったって本当?お父さんがね、教えてくれたの」
今は傷痕のない顔を不思議そうに眺める朱莉に優しい笑みを向け、少し傾げられた頭を撫でながら答える。
「本当だ。お前の母ちゃんが……って朱莉はどこまで聞いてんだァ?母ちゃんの力のこととか知ってんのか?」
「うん、怪我を治せる不思議な力を持ってたって聞いてる。でもお母さんの前では絶対にそのお話はしなくて……素敵な力なのに不思議だね」