第26章 月と太陽
未だに杏寿郎は更紗が夕刻近くに外出しようとすれば、心配して必ず何を置いても付き添っている。
それに毎回朱莉も同行しているので、少しでも父親や母親の役に立ちたいという幼いながらの子供心からきた言葉のようだ。
「あぁ、朱莉がお母さんと一緒くらい強くなれば安心出来る。明日からでも時間を作って共に鍛錬するか」
「うん!お母さんも一緒にしよう?」
更紗は昔の鍛錬の様子を思い浮かべたのか、緩やかに目を細めて頷いた。
「はい、もちろんです!では朱莉ちゃん。お父さんとお母さんが演武をする間、皆さんと一緒に待っていて下さいね。待っていてくれたご褒美に帰ったらスイートポテトを作って差し上げます」
スイートポテトと言う言葉に朱莉だけでなく杏寿郎の目が爛々と輝き出した。
2人のそっくりな表情が可愛らしく、思わず小さく声を出して笑い杏寿郎の頬と朱莉の綺麗な髪を撫でる。
「待ってる!お父さん、楽しみだね!」
「うむ!演武にも気合いが入るというものだ!朱莉、また後でな!……すまない、この子を少しの間見ていてあげてもらえるか?」
朱莉を差し出した先はもちろん、今でも親交のある元鬼殺隊の柱を終戦まで勤め上げた仲間たちだ。