第26章 月と太陽
ここは産屋敷邸の相変わらず手入れの行き届いた庭。
月日が流れようと美しさは旧産屋敷邸と遜色ない。
「お父さん、お母さん!私も炎出したい!」
突飛な言葉を紡ぎ父親と母親を呼ぶのは、銀色の髪に暖かな炎のような瞳をもつ少女。
まだ5歳にも満たない年齢に見える。
「そうか!ではまず全集中の呼吸から教えてやる!朱莉(あかり)はお母さんと一緒で向上心があるな!だが鍛錬は厳しいぞ?」
「朱莉ちゃんなら大丈夫ですよ。お父さんの血を濃く受け継いでいますから」
朱莉と言う少女に呼ばれた父親と母親が木刀を腰に差しながら笑顔で振り返る。
父親の髪は金色で毛先が赫で彩られており、瞳は朱莉と同じ暖かな炎のような色をたたえた男性。
母親の髪は朱莉と揃いの銀色、柘榴石のような瞳をもつ女性。
すっかり父の顔となった杏寿郎と、あどけなさが完全に抜け落ち、今や母となった更紗だ。
2人は現在、1人の娘をもつ親となった。
「厳しくても大丈夫!私ね、お母さんとお父さんみたいに強くなりたい!」
なんとも勇ましい朱莉の発言に杏寿郎は笑顔で小さな体を抱き上げ、更紗は柔らかな頬をそっと撫でた。
「頼もしいな!強くなったらお母さんを守ってくれるか?」
「うん!そうすればお母さんが1人でお買い物行く時も、お父さん心配しなくてすむでしょ?」