第26章 月と太陽
更紗の隣りに着いたら着いたで
「杏寿郎君!頑張りましょうね!私も身命を賭して挑みますので!」
なんて神妙な顔で……やけに気合いの入った言葉をかけられたので更に疑問を深める。
「そんなに気合いを入れずとも、写真を撮ってもらう際は笑顔を向ければ良いのではないか?」
更紗の願い事。
それは共に闘い支えてくれた皆と写真を撮ることだった。
任務先の街で写真館を見つけた時から、いつかは皆で撮りたいと思っていたらしい。
それを叶えるべく目の前にはカメラを用意した写真館の主人がにこやかに待機してくれている。
だが今自分たちの周りで写真に写ろうとしているのは柱や継子たちと玄弥だけである…… 更紗の希望とは違う。
「こうした方が皆さん自然な笑顔になるんですって!私、した事ないのですが頑張って変な……ムグッ」
「待て待て!甘露寺、おかしな所で更紗の言葉が遮られたぞ!」
「細かいこと気にすんな!あー、ご主人!撮ってください!派手に面白いの」
いつの間にか他の参列者が写真館の主人の後ろに並び、ある者は心配そうに……その他は期待のこもった視線をこちらに向けている。
そして主人の掛け声と共に杏寿郎の顔の皮膚が天元と実弥によって様々な方向に引っ張られ……そのままの状態でカメラの音が鳴った。