第26章 月と太陽
「いやいやいや!いつまでしてんの?!姫さん真っ赤になってんじゃねぇか!……家族いんだぞ?」
天元の言葉に杏寿郎は更紗から顔を離しつつ肩を抱き寄せ、自分と更紗の家族を視界に入れニコリと微笑んだ。
「失礼しました!更紗があまりに愛らしく歯止めがききませんでした!」
あまりの堂々っぷりに男3人は苦笑い……そして唯一の女である更紗の母親……紗那は頬に手を当て、うっとりとした表情を浮かべ2人に歩み寄っていった。
「仲良しさんねぇ!更紗ちゃん、泣いていたら折角のお化粧が崩れちゃうよ」
そう言って紗那は懐からハンカチを取り出し涙を拭ってやり、もう流れてこないことを確認すると頬を撫でてから柱たちに向き直った。
「では、よろしくお願いします!とびきり笑えるもので!」
『御意!』
いつの間にこんなに打ち解けたのだろう。
柱たちが御意なんて言葉を使うのはお館様だけかと更紗は思っていた。
杏寿郎を仰ぎみても首を傾げているので、こちらも何がどうなっているのか分からない状況らしい。
「あの、とびきり笑えるもの……とは何でしょう?あれ……皆さんお顔に心做しか黒い笑みが」
「ふむ、嫌な予感しかせんな!」