第26章 月と太陽
祝言の参列者は互いの家族や元柱たちを始めとした、産屋敷一家、鈴取合戦第2幕を共にした者たちと禰豆子、鈴村、双方の担当刀鍛冶といった鬼殺隊に属していた際に特に親しくしていた人たちのみ。
そんな知った顔ばかりなのに更紗は緊張の連続だった。
そして会場から退場した瞬間には安堵や感謝、ほんの少しの物悲しさ、そして夢のように胸中を満たす幸福感……様々な感情が入り乱れ涙が零れ落ちた。
「更紗、どうした?大丈夫か?」
「すみません……色々な感情が溢れてきまして。でも何よりこうして今杏寿郎君の隣りにいられることが夢のようで……幸せ過ぎて涙が勝手に」
笑顔で涙を流し続ける更紗の顎を片手で掬い上げ、額同士を軽く重ね合わせる。
「そうか、俺も幸せ過ぎてどうしたものかと思っていたところだ」
杏寿郎は笑みを浮かべたまま額を離し、代わりに桃色に彩られた唇に自らの唇を重ね……
スパーンッ……と今し方出てきた部屋の襖が勢いよく開いてしまった。
つまり全参列者の前で口付けを交している状況である。
数秒……双方の時間が止まっていたが、先に動きだしたのは参列者側の元柱だった。