第26章 月と太陽
「今すぐ死んじゃったら駄目だよ!煉獄さん泣いちゃうでしょ……でも本当に幸せそうで私も」
「更紗、入っても大丈夫だろうか?」
会話の途中だったが2人が待ち望んでいた杏寿郎が部屋の前に到着した。
アワアワと慌てる更紗の手を鈴村が笑顔で1度キュッと握り、杏寿郎がいる襖の前へと移動してゆっくりとそれを開いた。
「お待ちしておりました。月神さんの準備は整っています、こちらへどうぞ」
「う、うむ。ありがとう」
鈴村に促された杏寿郎は仕切りに使われている障子の前に立ち、それが開かれるのをジッと待っている。
「心の準備はよろしいですか?祝言の前に花嫁さんのあまりの綺麗さに卒倒して気を失っちゃ駄目ですよ?」
「す、鈴村さん!そんな……」
慌てる声は聞こえないふり。
鈴村は杏寿郎が頷くのを確認すると障子を音を立てずにゆっくり取り払い、そのまま部屋を後にした。
杏寿郎の目に映ったのは恥ずかしげに頬を薄紅色に染めながら微笑む更紗の姿。
今まで見たことのない赤吹きの白無垢に身を包み、銀色の髪は綺麗に結い上げられ鬼の角隠しを頭に被っている。
いつもと違うはっきりとした化粧。
目の際は杏寿郎の色を連想させる赤が引かれ、唇は薄い桃色に彩られている。