第26章 月と太陽
ついに喜ばしくも緊張する日がやってきた。
祝言会場である産屋敷邸の一室。
既に着付けや化粧を施し終えた更紗は障子で仕切られた部屋で杏寿郎の迎えを待っている。
「す、鈴村さん。変じゃないですか?当たり前ですが白無垢など着たことがないので……すごく恥ずかしくて」
「全っ然変じゃないよ!むしろ綺麗過ぎて煉獄さん気絶しちゃうかも。赤ふきの白無垢と鬼の角隠しってさ、煉獄さんの赤と月神さんの白が折り重なっててピッタリよね。綿帽子も捨て難いけど、折角綺麗だから何処からでもお顔見える方が絶対いい!……月神さんは角隠す必要ないけど」
褒められ顔を赤く染めながら、もう一度着付けてもらった白無垢を見てみる。
襟元や袖口などは杏寿郎を彷彿させる赤色で見ているだけでその顔が浮かぶようだ。
「すごく幸せです。治癒の力が無くなっちゃってもう前みたいに誰かの傷を癒したり、紫炎の呼吸の技を出すことは出来ないですが……それをする必要がない世界で、誰よりも大好きな人と祝言を挙げられるなんて……幸せ過ぎて今すぐにでも死んじゃうんじゃって思うくらいに幸せです」
ふわりと笑う更紗の顔は見ているだけで幸せのお裾分けをしてもらえそうなほどである。