第26章 月と太陽
自分の息子を褒めるのは恥ずかしいらしく、どんどん言葉尻が小さくなり心做しか眉が上がり……口元がウニウニしだした。
杏寿郎も更紗も、そしてそんな表情を1番近くで見ている千寿郎も照れ隠しだと気付いている。
しかしそれを指摘してしまっては野暮というもの。
気付かないふりを続け穏やかな笑みのみで応えた。
「はい!お2人とも似合うと思います!もうすぐですが衣装は出来上がりましたか?出来上がっているならば、どんな感じなのか教えて欲しいです!」
興味津々、千寿郎……と槇寿郎の瞳が爛々と輝いているが、残念なことにどのような衣装なのかを知っているのは更紗のみ。
杏寿郎も当日まで見せてもらえない。
「衣装は謝礼と共に今日お館様から届いたぞ!しかし俺も当日までのお楽しみらしく、どのようなものか知らんのだ!唯一知っている更紗も現物は見ていないので……全員が当日までのお楽しみということになるな!」
「1度袖を通さなくて大丈夫なのか?体に合っていなかったら……一生に一度の晴れ舞台だぞ?」
明らかな落単と焦りの色を見せた槇寿郎。
もちろん見たい気持ちもあるかもしれないが、自分の自慢の息子といつしか娘のように思っている更紗の祝言を素敵なものにして欲しい……という親心もみてとれる。