第26章 月と太陽
「違います!人間らしからぬ人間が闊歩していた屋敷で、唯一心優しい人を思い出して感傷に浸ってしまったと言いますか……お義父さまが怒って下さるのも、千寿郎君が悲しんでくださるのも私には身に余る光栄なんです!考え様なのですが私の寿命が120年あるとすれば、10年失っていたとしてもあと90年も生きれますよ!」
「なるほど!つまり俺はあと91年生きる計算になる!果たして内蔵がもつのか疑問が残るところだがな!」
更紗の治癒能力が残っており自己修復能力が健全であったならば、もしかすると2人とも超高齢まで生き延びることが可能だったかもしれない。
しかし残念と言うべきかなんと言うか…… 更紗は全ての能力を鬼舞辻との闘いでなくしているので、まず間違いなくそこまで生きるのは不可能だ。
そんなことは更紗も杏寿郎も十分理解している。
理解した上で気を遣わせてしまった2人に元気を取り戻して欲しくて発した言葉である。
「……120歳。生きたとして、お前たちはずっと仲が良いのだろうな。千寿郎、祝言が楽しみだな!更紗は間違いなく白無垢が似合うし、杏寿郎も……なんだ、その……紋付袴が似合う」