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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第26章 月と太陽


いつもまるで頃合いを見計らったかのように現れる槇寿郎。
今回もそれは健在だった。
少し離れたところをゆっくり歩いていたのに、今は……鬼のいなくなった世界で鬼の形相で猛然と走り寄ってくる。

更紗はそうでもないのだが、柱となれば耳が途轍もなくよくなるのだろうか……

「どういう事だ!10年も寿命を失わされただと?!杏寿郎……刀を持って来い。そやつらの寿命を全て奪い去りに行く」

あっと言う間に杏寿郎の目前に到達して肩をガシと強く掴み、脳に損傷が起きないか心配なるほど揺さぶっている。
あまりの衝撃と父の怒り具合に、杏寿郎は笑顔をたたえたまま明後日の方向を眺め出してしまった。

「お義父さま!杏寿郎君が倒れてしまいます!それにあの屋敷の当主は杏寿郎君の手をお借りして滅しました!覚えていらっしゃいますか?私の首が……その……あれになった時です!」

首を切られたなんて言えば更に怒りを増長させかねないと考え濁して伝え……その意図を読んでくれたのか、杏寿郎を揺さぶる手がピタリと止んで今度は眉を下げた。

取り敢えず怒りをおさめなくてはと、心の古傷の痛みに気付かないふりをして言葉を続ける。

「あの屋敷に住んでいた人は……恐らく誰もこの世にいないと思います。杏寿郎君に助けていただいた夜、稀血である私の匂いに寄せられた鬼に襲われて……生き残ったのは私とあの当主だけだったはずです……よね?杏寿郎君」
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