第26章 月と太陽
「それをお伝えするならば俺も一緒だぞ?既に俺は信じられないくらいに幸せだからな!さて、父上は引き止める千寿郎を引きずって予定よりはやくこちらへ到着されるはずだ!お待たせするのも気が引けるので、早めに道場の」
「杏寿郎!更紗!今到着したぞ!何処にいる?」
噂をすれば何とやら……
約束の時間まで一刻もあるはずなのに槇寿郎が到着してしまったようだ。
「父上!まだ兄上も更紗さんも準備出来ておりませんよ!約束の時間まで一刻もあるのですよ?!そんなに急かしてはいけません!」
しかも千寿郎に叱られている。
2人は顔を見合わせて笑い合い、杏寿郎が更紗の肩を抱き寄せてどちらからともなく槇寿郎と千寿郎を迎えに玄関へと歩みを進めた。
その後、やはり出発予定時刻を大幅に繰り上げて墓参りへと赴いていった。
かと言って槇寿郎に特に急かされることはなく、ただ家族と更紗全員で過ごしたかったらしい。
制止する千寿郎を引きずりまわしながら杏寿郎と更紗が行く先々について回るものだから、ほんの少し更紗が着替えるのに時間が掛かったのはここだけの話である。