第26章 月と太陽
滅多に見られない杏寿郎の表情につられ更紗の頬も薄紅色に染まり、互いに頬を赤らめて微笑み合うという……天元が目撃したら盛大に横槍を入れられる桃色な空気が漂っている。
「もちろんです。杏寿郎君が喜んでくださるなら家事や手合わせの時以外はこの髪型にします。……そう言えば私が騒がしてしまったせいで杏寿郎君の手を止めてしまいましたね。どうですか?剣術道場を開く準備。ちょうど私は家事も終わりましたので、一緒に準備を行いますよ」
やはり鬼殺隊剣士の次の職は剣術道場だったようだ。
煉獄家は鬼殺隊発足から炎柱を勤めあげた旧家なので、杏寿郎の生家一帯の住人はその事を知っている。
しかし柱の多忙さも知っているが故に教えを乞いたくても乞うことが出来ず、諦めていた家庭も多いとかなんとか。
そんな中で鬼殺隊が解散となり、杏寿郎に時間的余裕が出来たことを嗅ぎ付けたご近所さんからの要望が入ったのだ。
特に本人からの希望ではなく、ご子息の心身を鍛えたい親世代からの要望が多いらしい……
「ありがとう。では木刀の数を数えてもらえるか?足りなければわざわざ来てくれる門下生に悪いからな。あとは床を磨いて終わりなので、それが終わればお墓参りに行くか」