第26章 月と太陽
「そうか!俺たちにお館様が直接聞いたとて答えないと判断されたのだろう。それで鈴村少女に願い出て祝言の衣装を君に聞いてもらい、情報を得て作ってくださったのではないかと思う」
警戒心が地下の更紗に聞くのは容易かっただろう。
まんまとお館様の手の平の上で転がされた更紗は縁側に両手を付き項垂れている。
「元々鈴村さんにお願いする予定だったんです。油断していました……申し訳ございません」
「謝る必要などない。お館様からのお祝いなのだから、有難くいただいておこう。どれ、俺もどのような衣装か見たことないので早速」
紋付袴と白無垢が入っていると思われる桐の箱に杏寿郎が手を掛けた瞬間、今まで項垂れていたはずの更紗が目にも止まらぬ速さで蓋を開けるのを阻止した。
もちろん杏寿郎はビックリで目をまん丸にしている。
「あ、あの!当日までのお楽しみにして下さいませんか?私も現物は見た事なくて……幸いにも祝言まで1ヶ月ありませんし、虫干しも必要なく当日にお披露目……がいいと(鈴村さんが言っていました)」
「ふむ、それもいいかもしれんな!してその提案は鈴村少女が?」
提案を受け入れてもらえ安堵したのも束の間、次は更紗が驚いて目を丸くする番となった。